久々にバックロードホーンを作りたくなりました。でも大きすぎるのはお金もかかるし手間も大変です。それで 8cm ユニットを使った手軽なものを作ることにしました。
設計図ですがネットで JAVA Aplet でのシミレーションや設計ができなくなってしまったので、ググって適当なものを使うことにしました。
そこで Fostex FF85K を使ったバックロードホーンの図面を見つけました。それを借用して作ることにしました。手書きの図面でしたので数値はペイントでわかりやすく入れ直しました。ホーンの長さは138cm 程度あると思いますので低域再生の限界は 62Hz ぐらいかと思います。A と B はどこに使うか指定がありませんしなくても完成できるので使いませんでした。
元のサイトは
加藤ちゃんの日記
FF85K用バックロードホーンスピーカー(BH)の作成 その4
です。ブログに載せていただいた作者に感謝いたします。
使用ユニット FitalPRO 3FE22-8 8cm フルレンジ
使用するユニットは FitalPRO の 8cm フルレンジ 3FE22-8 です。コイズミ無線でセールしていたので使ってみようと思いました。ペーパーコーンのネオジウムマグネットで 8cm ユニットでありながら能率が 91dB もあるのはすごいと思います。45度特性も非常に優秀で良くできたユニットだと言えます。エッジはゴム (Kapton) です。Qts = 0.47 ですがもっと低い 0.3 ぐらいかと思う周波数特性です。200Hz あたりから低域にかけてなだらかに減衰しています。これならバックロードホーンにして低音を増強してやればちょうど良くなるのではないかと思います。
使う板ですが図面での厚さが 12mm となっていますのでシナ合板より重くてズッシリした MDF を使うことにしました。バーチ材なら言うことないですが値が張るので見送りました。板と直線カットはネットで注文しました。
作成が複雑なので手順書を作成しました。下の画像のようになります。
バッフルとサブバッフルは鬼目ナットとボルト (M6) で付け外しができるようにしました。鬼目ナットの取り付け穴はサブバッフル⑱の上下左右から其々 20mm としました。
製作は、まずケガキと穴開けをします。それらが済んでから側板をマスキングしてマホガニーで塗装します。ジェルカラーニスを使いました。 MDF は塗料の吸着が良いので1回塗りで十分キレイに塗れました。その後音道を製作します。 MDF の木口はボンドの吸収が良いので一度ボンドを塗って均したら少し乾燥させます。その後改めてボンドを塗って張り合わせます。音道が出来たら両側板と張り合わせ重しをして乾燥させます。
ボンドが乾いたら修正をします。私の場合片方の底面の右前部がほんの少し出てしまいました。板が反っていのでしょうか。サンドペーパーで目立たなくします。側板の塗装が剥げてしまった箇所は塗り直しました。
次は、側板の外側と木口にマスキングをしてクリアラッカースプレーで塗装します。1回塗りで十分です。乾いたらマスキングを外します。
ここからは着々と作業を進めます。
①鬼目ナットをハンマーで打ち込みます。
②ターミナルとケーブルを結線して表側までケーブルを引き出します。
③ターミナルを螺子で取付けます。
④吸音材を入れます。私は金魚の上部フィルター用の物を入れています。これは結構良い結果です。
⑤サブバッフルを M6 のボルトで取り付けます。
⑥ケーブルをユニットに結線します。
⑦ユニットを螺子で取付けます。
セッティングをしてアンプに火を入れます。このユニットは出力音圧レベルが 91dB と高いので真空管のシングルアンプで十分にドライブ出来ます。外側にあるのは口径 10cm のバックロードホーンです。使用ユニットは Fostex FE108EΣ です。これと聴き比べてみましょう。
聴き始めてわかったのはビリつきが感じられ、また低音がスカスカでバックロードらしいパワーがありません。どうもバッフルとサブバッフルとの間にわずかに隙間があるようです。鬼目ナットは締め付けると少し浮き出て密閉が無くなります。そのせいだと直感してフェルトを丸く刳り抜いてパッキンを作り挟んでみました。ビリつきはおさまり低音のパワーも感じられるようになりました。これでようやく試聴ができます。
いくつかのアルバムを聴いてみます。まずバックロードホーンのハイスピード感を試したくて選んだのが Skinny Hightwer と Ronny Jordan です。いい感じです。流石に 8cm ユニットだと振動系の質量が軽いのでスピード感が素晴らしいです。次は低音の再生能力を試すために Kool & Klean のアルバムを聴いてみます。これはなんとか再生できてはいますが重低音はちょっと厳しい感じです。でも低音感は思ったよりもあります。おそらく倍音成分が多く出ていてそれで聴こえている用に感じるのでしょう。次はヴォーカル物を聴いてみることにします。 Joyce cooling のものを選びました。男声も女声もどちらも入っており、嫌な濁りやビリつきもなく発音がきれいに聴こえます。イタリア製のユニットの本領発揮と言ったところでしょうか。
8cm のバックロードでどれだけ良い音が出せるのか心配していましたが、思っていたよりずっと低音も良く出て中高音へのつながりもとても良いです。これはメインシステムに組み込んでも良いほどの出来栄えです。しばらく音楽に聴き入ることにします。
しばらく聴き込んでみて、ちょっと低音が物足りなく感じました。吸音材を増やしてみたり減らしてみたりした結果バックキャビティには何も入れないのが一番良いと分かりました。その代わりに漏れてきた中高音を吸収するためホーンの最後の曲がり角に 126mm x 68mm のニードルフェルトを入れました。この吸音材の量も色々と試してこれが一番良いと判断しました。
こちらのほうが断然低音のパワーがアップしました。これこそバックロードホーンの低音です。素晴らしい。回り道はしましたが目指すバックロードホーンの音が出て最高です。口径 8cm のユニットでこんなに良い音が出るものなんですね。良い方へ期待が外れました。最後にこの図面を考えてくださった加藤さん(?)に感謝いたします。
その後スピーカーのエージングが進んできたので再度チューニングすることにしました。低音の特定の周波数にピークがあるようで耳に付きます。それでバックチャンバーに少量の吸音材を入れてみることにしました。入れるのはニードルフェルトです。量を色々と加減してみて 126mm x 70mm のものを SPユニットのちょうど後ろ側に両面テープでとめました。こうすると低音の凸凹の周波数が平滑化されて大変に聴きやすくなりました。そしてピークのレベルが下がったことにより音の重心が下がって更に低音域まで聴こえるように感じます。ただし出力音圧は下がったようです。今までと同じボリュームの位置では少し出てくる音が小さくなりました。
その後音楽を楽しんでいましたが、特に Paul Jackson, Jr. の演奏でビリツキが感じられます。色々と調べてみるとなんとサブバッフルが特定の周波数で共振していました。ネジ止めの量が少なかったようです。そこで SPユニットの下側にも追加でネジ止めしてみました。鬼目ナットとボルトのセットはもう手持ちがないので「棚板用螺子」で締めました。すると気になって仕方なかった正体不明のビリツキが収まって音楽に集中できる様になりました。 SPユニットが強く固定されたおかげでしょうかロスが減り音量も大きくなりました。
今までは真空管のアンプばかりで聴き込んで来ましたが半導体のアンプではどうかと思い切り替えて聴いてみました。するとこちらの方がダンピングが効いてよりバックロードホーンには合っていると感じました。理由はダンピングファクターが真空管のアンプでは一般的に1桁から10程度に対して半導体のアンプではそれが100以上あるのでこの違いが出てくる音にも反映されているのだと思います。私個人としては半導体のアンプとの組み合わせのほうが好きです。